Tuesday June 30 2015 category:本
千尋(ちいろ)の闇
うちの母が出版されると同時に買った本で、読むなり「この本おもしろいよ!」とちょっと興奮して(非常にめずらしい)教えてくれた思い出のある本。
確か、日本では処女作である『千尋の闇』よりも『リオノーラの肖像』が先に出版されていて、母はそちらも読んでいたようだけど、読め読めと勧めてきたのは『千尋』でした。
『千尋の闇』の主人公は冴えない(ゴダードの男性主人公はいつも冴えない…)元歴史教師、マーチン・ラドフォード。
なにやら過去にあったらしく、離婚され、定職も住む場所もなく、友人のアパートに居候しているが、だんだんと疎ましがられている。
彼が大学時代の友人に招かれて訪れたのはマデイラ、ここで南アの富豪から1900年代頃の歴史調査を依頼される。
それはアスキス内閣の内務大臣、エドウィン・ストラフォードの謎の失脚劇についてだった…
マーチンはとにかく、最初から最後まで徹底してちゃぶ台をひっくり返したいほど『それやったらダメだろ!』とか『マーチン、それ罠!罠!』的な、意志の弱いダメ男なんで、読んでてイライラすること請け合いなんですけれども。
エドウィンのメモワール(追想録)から伺える、エドウィンの紳士っぽい優しさ、エドウィンの婚約者のエリザベスの愛らしさと高潔さに励まされるので、何とか読み進められます(笑)
ある程度話が進むと、エドウィンの不幸の原因が一体何なのか、そしてそれが現代にどう影響しているのか…が気になって、一気に読んでしまいます。
これはエドウィンとエリザベスの物語なんだな…と思って読み進めると、ラストにどんでん返しが。
この物語の語り手がどうしてマーチンでなければいけなかったのかが、鮮やかに浮き上がってきます。
(でもね、やっぱりマーチンはマーチンなのよ…!そこがまたゴダードなんだけれども)
大切なものは何?
名声?権力?富?
もちろん、これらだって重要だ。
それらに対する欲を認めるということが、自分と折り合いをつけて生きていくということの一部でもある。
愛だけじゃ生きていけない。
でも、人に対する愛、動物に対する愛、書物や絵画にそそぐ愛、なんでもいいから、愛がないと生きていけない。
そして、愛というのは結局『ゆるし』なんだな…などと、ぼんやり考えるような物語。
言葉にしてみるとなんと陳腐なんだろう
なぜなら、あの人はなにも要求しなかったから
母は、娘と読んだ本について語り合うタイプの人ではありませんでした。
「最近、なんか面白い本あった?」と聞かれて、「ああ、この本よかったよ」と初めて勧めてくる人でした。
その母が「面白かったから」と、帰省した娘の枕元に置いた本。
何となく、母がこの本を私と共有したかった気持ちがわかるような気がします。
きっと宝物を見せてくれる幼い少女のような、そんな気持ちだったんだろうな…と思います。
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