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Wednesday July 01 2015 category:

自虐の詩


自虐の詩 上巻

自虐の詩 上巻

  • 作者: 業田 良家
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2007/08/24
  • メディア: 単行本


Yahoo!のプレミアムというサービスを利用していて、あーなんかもう出品したりしないし、やめようかな…と思って解約手続きを進めていたら、プレミアム会員はなんだかいろいろ特典があるようで…
http://premium.yahoo.co.jp/

個人的にはコミックスの読み放題特典が一番うれしかったので、とりあえずそのまま継続してます。
これ→http://bookstore.yahoo.co.jp/premium/tadayomi.html


6月26日(金)~7月2日(木)までの読み放題の中に、『自虐の詩』がありました。
かなり有名な作品なのでタイトルだけは知っていたんですが、読んだことはなかったのです。
言ってみれば食わず嫌いみたいなもので、「泣ける」という評判のものはまず手に取らない(;´Д`)
あまのじゃくです;

今回通して読んでみた感想ですが、これは「泣ける」というより、とにかく「理不尽」であると思いました。
(泣きはしなかったし、むしろ怒った)

『自虐の詩』は薄幸の主人公幸江と、彼女の愛する情夫イサオ、二人を取り巻く人間を描いた4コマ漫画。
で、イサオというのがとことんヒモで、働かない、幸江にたかって飲む・打つ、気に食わないことがあったらちゃぶ台をひっくり返す。
(屋台をひっくり返したこともあった)
なんで幸江はこんなのが好きなんだ?と思うことしばしば…

イサオの残り香を嗅いで「好き」と思ったりなど、あーあるある!というネタも挿入されているのだけれども、とにかく、イサオがクズすぎてだんだんイライラしてくる。

そして、下巻から明かされてくる幸江の生い立ちがまた、悲惨を極めていて辛い。
母親に捨てられた父親(幸江は父と暮らしている)もまた、幼い幸江にたかって暮らしているクズ。
幼いながらに周りの子とは違う自分、溶け込めない自分を恥じている幸江。
それでも愛されたい。
友達と仲良くしたい。
という幸江の気持ちが、痛いほど胸を打つ。

中学に上がってできた唯一の理解者の熊本さんもまた、貧乏で汚く、ブスで、クラスでも浮いた存在。
幸江は熊本さんに支えられながらも、どこかで彼女を嫌悪している。
同族嫌悪。
そして訪れる破局と熊本さんとの和解、逃げるように出てきた東京でのイサオとの出会い。
4コマという簡略化された様式に、よくもここまで…というくらい幸江の気持ちが詰め込まれている。

これでもかというくらい畳みかけられる不幸に、読んでいる私まで鬱になってくる。

下巻の中で幸江がイサオに執着する(恋着する)理由も明かされるのだけど、そのエピソードのイサオはチンピラながらもとりあえず仕事についているし、わりとまともに幸江を守ると明言している。
一体どうしてイサオがこんなひどいヒモ状態になったのかは、最後まで明かされないまま終わる。

ラストシーン、身ごもった幸江が人生のすべてを許すシーン、おそらく屈指の名場面であるんだけれども…
どうしても素直に心が動かない。
ああ、お母さんを許せて、今までの自分を許せてよかったね…というすっきり感がない。
なぜ?なぜ?なぜ?
読み終わってからずっと、頭の片隅で考え続けた。


どうも、幸江の生まれてくる子供が幸せになるとは思えない、というのが理由のようだ。
幸江はまあ幸せかもしれない、愛するイサオがそばにいてくれる限り、彼がどんなにダメ男でも構わないんだろう。
でも子供は、自分の母が作ったご飯の載ったちゃぶ台をひっくり返し、「このお金だけは…」という言葉を踏みにじって金を奪って博打に行く父、働きもせず、具合の悪い母にご飯を作らせ、目の前にあるテレビのチャンネルすら母を呼びつけて変えさせる父、そんな父を見て育って幸せを感じるものなんだろうか。
私にはどうしてもそうは思えない。

確かに人生って理不尽だし、不条理に満ちていて、願ったこととは反対のひどいことだってよく起きる。
でもだからせめて、子供の頃だけでも幸せであってほしい。
自分の親を憎む、憎むまでいかなくても嫌うって、子供にとってこれ以上不幸なことってない。
できるなら、隣のおばちゃんになって「ねえ、そんな状態で子供を産んで、子供が本当に幸せに育つと思うの?」と尋ねてみたい。
幸江はなんて答えるだろう?

イサオがね、もっとまともになってくれそうならなあ…
(妊娠してる)おなかに当たらないようにちゃぶ台をひっくり返してくれる…とか、そういうレベルの話じゃないだろ!と思っちゃう。
でもそういうエンディングだと、『自虐の詩』たらしめている何かが消えてしまうのだろうな。


だから、私にとって『自虐の詩』は泣けるマンガ、ではなくて、人生の不条理さ、理不尽さを訴えるマンガです。
人生のすべてを許して、自分の中の怒りが消えたと見えても、その先にまた別の誰かの(子供の)抑圧された怒りが続いていく。
それこそが人の世の営みってやつなのかも…

私の人生のなかにも、子供にとっての怒りの種が埋まってるのかもしれないな。


泣けるマンガではなかったけど、確かに間違いなく名作でした。
ここしばらく読んだ本の中で、いちばん考えさせられるテーマの本だったよ。
でも、ちょっとしばらくは読みたくないな…(;・∀・)
いつかまた読み返したくなるだろうとは思うけれど。
タグ:Ringo comics

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