Wednesday March 05 2014 category:本
ふらいぱんじいさん
丸ごと一冊ナンセンスの宝庫。
なんたってしょっぱなからイカしてます。
ふらいぱんじいさんは まっくろな おなべの じいさんでした。
たまごを やくのが だいすきで、いつも こどもたちの ために たまごを やいてやりました。
そうです。きんいろの おひさんみたいな めだまやきをね!
まっくろなお鍋のじいさん?
いきなり子供の心をわしづかみです。
しかし、じいさんの幸せな日々が終わる日が来ました。
ある日おくさんが新しいフライパンを買ってきたため、じいさんは栄えある『たまごやき』の地位から蹴落とされ、にんじんや玉ねぎを炒める境遇になってしまったのです。
そこへやってくるのはゴキブリで、じいさんに「もっと広い世界を見に行ったらどうだい?」なんて言っちゃうのです。
じいさんは決心します。
どこかでまだ卵を焼くために、自分を必要としてくれるところがあるかもしれない!探しに行こう──!
じいさんは、ジャングルへ行き、砂漠へ行き、海へ行きます。
そしてついに安住の地を見つけるのですが…
じいさんはけっこう自分勝手(野菜を炒めるのがいやで家出するフライパンなんて)ですが、情に厚いところもあり、なかなかほろりとさせられます。
最後まで野望(?)を捨てきれないじいさんが愛おしく、ほほえましい。
あっちへ行き、こっちへ飛びする場面の移り変わりも、もちろん楽しい。
堀内誠一さんのイラストもまた大きな魅力のひとつです。
どの時代の子供たちにも古びず、魅力的にみせる絵ってそうそうないのでは?と思いますが、堀内さんの絵はまさにそれで、私が子供の頃に読んだ時も、うちの子供が初めてじいさんと出会った時も変わらずユーモラスで暖かな魅力に満ちています。
じいさんもじいさんと出会う動物たち、夜の砂漠、嵐の海。
簡単(そうな)絵なのに過不足なく子供に必要な情報がつまっていて、それでいて想像の余地も残っている…
(名作と言われる絵本や童話はそういうものなのかもしれませんね)
このステキで素晴らしい冒険はぜひ本編にあたっていただきたいので、あらすじは書きませんが(書いてもナンセンスの面白さは伝わらないですものね…)、もちろんハッピーエンドです!
誰しも無条件に笑顔になってしまうようなお話、これこそがこの本の魅力です。
読み聞かせなら幼稚園児ぐらいから、自分で読むなら年長さんか小学校1年生ぐらいから。
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