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Friday July 13 2007 category:

ぽっぺん先生とどろの王子

昨日に引き続きぽっぺん先生祭り。
今日は

ぽっぺん先生とどろの王子

ぽっぺん先生とどろの王子

  • 作者: 舟崎 克彦
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1977/01
  • メディア: 単行本


です。

さえない独身中年・生物学者のぽっぺん先生は、初めて探鳥の会のリーダーとして出かけます。
ただし、このリーダーはちっともリーダーの責務を果たさず、自分の目的のみを心にずんずんと歩き回ったあげく、ほかのメンバーとはぐれて一人ぼっちになってしまいます。
くさくさした気持ちの先生はお昼を食べようと、"バアサン"(先生のお母さん)の作ったお弁当を広げますが、おはしもなければシュウマイにつける辛子もしょうゆも入っていないことに気づき、よけいにいらいらささくれ立った気持ちになります。
お弁当を投げ出し、大の字に後ろへひっくり返った先生の後頭部に石が当たりました。
忌々しい石ころをぶん投げるつもりで起き上がった先生が見つけたのは、ニワトリを小脇に抱えた片足のない少年のハニワでした。
先生がそのハニワを拾って歩き出したとたん、例によってまたまた変な現象が起こります。
先生は地面を踏み抜いて、地下の世界へ落ちていきました…


地下の世界で繰り広げられる話だからではないですけれども、全体的にくらーい感じのお話です。
もともとぽっぺん先生のお話は底抜けに明るい話ではないのですが、これは群を抜いて暗いです。
地下世界のほの暗さと人間の心の暗部があいまって、暗さをよけいに際立たせているのでしょうか…
権力闘争、自分を上に見て他を従えようとする醜悪さがテーマと思うのですが。
だとすると、小学校3~4年生にはずいぶんと難しいような気がします。
(と思うのは子供の感受性を見くびってるかしら)

↓ネタバレあります。


ぽっぺん先生は地下の世界で『鳥が鳴いた瞬間』、抱えていたハニワの少年になってしまいます。
鳴いた鳥は先生の抱えていたハニワの抱えていたニワトリで、朝を告げるとともに、世界の始まりを告げたわけなんですが。(このあたり神話っぽくておもしろい)
それ以降、ぽっぺん先生はずーっと目の前で繰り広げられる物語を、(ほとんど)ただ見ているだけなのです。
主役はぽっぺん先生にあらず、ニワトリが先生と一緒に目覚めさせたほかのハニワたちなんです。
ぽっぺん先生は権力なんかに興味を示す人間ではないので、そういう展開しかありえなかったのかもしれませんね。

小さな小さな地下世界(最初の住人?はたった10人ちょっとです)、国としての体制もいまだ整っていない世界を、武力で圧倒して治めようとする滑稽さ。
互いに争う将軍たちには、世界を掌握したその後のビジョンはないのです。
ただ、自分が人より優れていることを示したい、それだけのために他の人々を犠牲にする非道さ。
大人の目で読むととてもわかりやすい構図ですが、はたして小学校3年生の子(うちの子3年生なんです^^;)が読んで理解できるのかどうか。
「ハリーポッター」や「指輪物語」のようにはっきりとした『善と悪』の対決はないので、(しかも、善が完全勝利する物語でもないような…)、読後のもやもやした気持ちを「あ~こういうことかも?」って徐々に発見していくしかないような気がします。
というより、私がそうだったんですが^^;


なんだか未消化なまま書いてしまったので、自分で読んでもわけわかりません…
読んだ方はなおさらですよね。すみません…orz

それにしても、今の図書館には(少なくともうちの近所のには)ぽっぺん先生置いてないんです。
な、なぜ…
せめて、「日曜日」と「帰らずの沼」くらい置いてあればいいのに…
私が司書なら児童書お勧めのところにおいておくのになぁ…


タグ:Ringo こどもの本
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あこ

ぽっぺん先生の方は、例えればドリトル先生のような立場なのでしょうか?
児童書なのに大人が主人公だったり、
主人公に先生がついたり、するところからの想像ですが(苦笑)。
この巻は機になりますね。タイトルだけではパスしてたでしょうが、
りんごあめさんのご紹介によると「ハニワ」が出て来るんですね!
それも鶏を抱いた埴輪!
惹かれるー(笑)!←よく解らないくせに古墳と埴輪好き。
今、市内図書館検索かけたら、行きつけの図書館には無かった!ですけど、他の所にあって貸し出し中でも無いので、リクエストしてみようかな♪
ほんと、ネットって、便利になりましたよねー。
by あこ (2007-07-13 23:51) 

toyo

まったく知らなかった本ですが、りんごあめ様のストーリー紹介だけでも作者のセンスの良さが感じられます。 機会があったら読んでみたくなりました。 この作者って以前新聞で読んだような気がします。 そのとき、ただものではないって感じていましたが、やっぱりな、そーかそーかなんてひとり妙に納得してしまいました。いや、そういうものに目をつけるりんごあめ様のセンスもただものではないですね。納得です。
by toyo (2007-07-15 12:58) 

りんごあめ

>あこさま
ドリトル先生はいついかなるときも紳士…だったような記憶があるのですが、ぽっぺん先生は…紳士とは程遠い…
いつまでも子供の心を失わない大人という意味では、似ている二人かもしれません。
でも、やっぱり…ぽっぺん先生は子供がそのままおじさんになった…というほうが適切かも。
すぐに嬉しくなったり、嫌になって何もかも投げ捨てたくなったり、自分のお母さんを「バアサン」と呼んでみたり、大学の食堂の定食を外で食べた挙句に食器をそのまま放置してみたり…あんまりお行儀のいい大人ではありません。
そこが魅力なのですけども。

ハニワ…ハニワ…ハニワだらけですよ~!
考証がしっかりとされていますし(子供相手でもちっとも手を抜かない舟崎さんが大好きですw)、挿絵もハニワばかりとハニワ好きにお勧めの1冊ですw
ぜひ図書館でリクエストしてください~~♪
by りんごあめ (2007-07-15 22:33) 

りんごあめ

>TOYOさま
私のセンスはさておき、舟崎さんのセンスで書かれた児童書は、大人の鑑賞にも堪えうるすばらしいものだとこっそり(?)思っています。
考証はしっかりとしていて、登場人物の個性もピカイチ、おこる事件はいつも常識を超えていて、子供にも読みやすい平坦な文章なのに、大人が読んでも十分に読み応えがあるのです!(はぁはぁ…
力が入りましたw
舟崎さんの著作には大人向けのものもあるそうで、今そちらを探しているところなのです。
うわさによると、それもとてもおもしろく、かつ、ちょっぴりエロティックとか。
ぜひぜひ手に入れて読んでみたいものです。
by りんごあめ (2007-07-15 22:45) 

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