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Tuesday February 25 2014 category:

ももいろのきりん


ももいろのきりん (福音館創作童話シリーズ)

ももいろのきりん (福音館創作童話シリーズ)

  • 作者: 中川 李枝子
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 1965/07/01
  • メディア: 単行本



るるこは、おかあさんから、とても大きいももいろのかみをもらいました。

で始まるこの物語は、るること、彼女が桃色の紙で作った大きくて何から何まで世界一のキリン『キリカ』の物語です。

有名な児童書なので、あらすじをご存知の方も多いと思いますが、つたないながらも要約するとこんな感じです…


るるこはもらった紙で大きな大きなキリン『キリカ』を作ります。
大きなキリカはるるこの部屋に入りきらず、夜は窓から首を出して眠るのですが、なんと夜の間に雨が降ってキリカのうつくしいももいろははげちょろに。
しかし、キリカはその世界一の視力で遠くの山に『クレヨンの木』があることを発見します。
世界一の脚力で駆けていき、キリカとるるこはそこに住むカラフルな、だけどはげちょろに色の禿げた動物に出会います。
しかし彼らは一様に「クレヨンの木に近づいたら危ない」と警告します。
クレヨンの木は、乱暴者のオレンジ熊に独占されていたのでした。

キリカはあっという間にオレンジ熊をやっつけます。(世界一の力持ちですから。)
そしてるるこにももいろに首をぬってもらいます。
オレンジ熊がいなくなったので、山の動物たちもやってきてそれぞれの色に塗りなおします。
どこからかはげちょろの白熊がやってきて、彼もオレンジ色に塗りました。
そしてダンスが始まりました。

みんなが踊り疲れて一息ついた時、るるこはおうちに帰りたくなりました。
動物たちは二人におみやげを持たせてくれました。
それは大きな大きな白い紙でした。
キリカを作ったももいろの紙より大きくて、そして描いたものがなんでも本物になる不思議な画用紙です。
るるこは庭に紙を広げ、キリカのおうちを描いていきます。
ももいろの夕日があたりを照らすころ、キリカのおうちはできあがりました。



私ははげちょろの薄汚れた白熊(乱暴者のオレンジ熊だということが示唆されている)がるること交わす会話が大好きでした。
「あのうー、ぼくもクレヨンをもらっていいだろうか?」
と、ききました。
「ええ、いいわ。あんたもゆうべの雨にあたって、ぜんぶはげちゃったのね。それでクレヨンの木をさがしにきたんでしょ。キリカとおんなじだわ。」
(中略)
「へえー、むかしのぼくってどんなふうだったの!」
「うん、ちょっとばかなくま──だったね。」
「そんならはげたほうがよかったわ。こんどはあたしが、りこうなくまにぬってあげる。だって、あたしはせかい一のクレヨンやだもの。」

るるこのおおらかさ!
そして、こいつは元の乱暴者のオレンジ熊だとはっきり書かないことに、子供心ながら『粋』を感じました。


私が(そしてたぶん大多数の子供が)いちばん心惹かれるのは、最後のキリカの部屋を描く過程です。
真っ白な紙にクレヨンで線を描いていくと、それがつぎつぎ本物になっていく。
ドア、赤いじゅうたん、スリッパ、鏡と帽子掛け、キリカの帽子とるるこの帽子、大きな椅子と小さな椅子、お客様用のふかふかの椅子、たくさんのお皿とコップ、お台所とお風呂、キリカの毛布にるるこのベッド、絵とカレンダー、タンスに時計…
と、るるこは次々とキリカのおうちを描いていきます。
そのたびにキリカは「いいなあー。それはいいなあー。」と合いの手を入れるのですが、これは読み手の心そのままで、自由なるるこの想像の翼に乗って、読み手の想像も広がっていきます。
これこそが『こどものための本』に必要不可欠なものじゃないかと思います。

想像力…
どこまでも広がるのびやかな想像。
想像の楽しみ。
そして共感。
読書の楽しみの根底にはこれがあり、幼いころにその楽しみを知るというのはとても重要だと思います。
この本にはその楽しみの種が、ぎゅうぎゅうにつまっています!
『ももいろのきりん』に限らず、優れた絵本・児童書ってだからこそ読み継がれているんだと思います。


小さい子供は「親と離れては生きていけない」と知っていながら、心のどこかで親から離れて「独立した自分の王国」や「自分一人の秘密基地」を持ちたいと願っているんじゃないでしょうか。
それはきっと将来独り立ちしていくための第一歩なんだと思います。
この『ももいろのきりん』は最後に、そのちいさな「独立心」をも満たしてくれる物語です。
キリカのおうちは『キリカとるるこ』のためのおうちで、そこには親はいません。
小さな独立国であり、秘密基地。
だからこんなにも子供の心をとらえて放さないんじゃないかしら?と思います。
タグ:こどもの本 Ringo

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